蓮池通信
子ども×神奈川県立美術館・鎌倉館

2008年 鎌倉館「夏の展覧会 あの色/あの音/あの光」に参画
2007年度6年1組

2年間近代美術館で過ごし,小学校を卒業した子どもたちは企画展「あの色/あの音/あの光」展(2008年5月31日~8月31日)に協力という形で再び美術館と交流を始めた。 2年間美術館で過ごしてきた子どもたちの「ものをみる視点」「子どもたちが2年間美術館で過ごしたあしあと」を展示の中に取り入れたいとの学芸員の意向から、展覧会に向けて春休みにワークショップを行った。

2008年3月 ワークショップ「鎌倉館百景」

子どもたちは5年生の頃、「水面をみつめよう」という題材に取り組んだが、鎌倉館の特性の1つは周辺の豊かな自然である。 子どもたちはこの2年、展示室で作品を鑑賞し、その目で1階テラスの風景から様々な発見をしてきた。 その子どもたちの目線を展示に取り入れようと「鎌倉館百景」と題した写真のワークショップを行った。 特に写真の技術的な指導はせず、鎌倉館周辺の風景を自由に撮影するよう促した。 デジタルカメラを手に持つことで、まず風景をよくみようと意識が高まり、失敗を恐れず自由な発想でシャッターを切っていた。

午後は一人ひとりの作品を鑑賞した。 いつも見慣れているはずの風景だが、風景の切り取り方や撮影の角度次第で新鮮にみえるということを子どもたちは実感していた。 この作品は展覧会期間中、子どもたちが風景から紡ぎ出した言葉とともに画家の作品の合間に展示され、来館者から好評を得た。

2年間、鑑賞を柱に子どもたちと歩み続けてきたが、鑑賞で育まれた感性が具体的に日常生活のどの場面にどう生きているのか確かな手応えがなかった。 しかし、このワークショップにおいて子どもたちが撮影したクオリティーの高い写真を目にした時、確かな感性の育ちを感じ取ることができた。 指導者としては、この一瞬にでる直感力やセンスを子どもたちの中に育てるにはどう指導すればいいのかもっとも難しい課題であるが、2年間美術作品や身のまわりの自然をよくみてきた経験が1つ形として残ったことは確かだと思う。

ここにビデオ

※BGM:「蓮池ジャポン」
2008年8月10日に行われた作曲家・片岡祐介さんによるワークショップ「蓮池を聴く」において、子どもたちが参加者の皆さんとともにつくりました。

2008年3月 鑑賞ワークショップ

2回目のワークショップは特別に葉山館の収蔵庫内で行った。 まず学芸員の案内で収蔵庫の中を探検し、美術館の仕事について説明を受けた。 潮風を防ぐために二重構造になっている搬入口のシャッターや目にしたことのない大きなエレベーター、 作品にたどり着くまでの何重もの大きな扉など、子どもたちはみるものすべてに「作品を守る」ことの意味を肌で感じていた。

収蔵庫には展覧会に展示予定の作品が数点並べられていた。 静寂の中、子どもたちは作品からいつものように黙々と言葉を拾った。 そこで生まれた子どもたちの実際の言葉に2年間美術館で過ごした日々を織り交ぜながら学芸員が「ポケット絵本」を作成し、 展覧会期間中は鑑賞ツールとして来館者に無料配布された。

ここをつまんでめくってください↑

2008年5月31日~8月31日「夏の美術館 あの色/あの音/あの光」開催

5月31日。近代美術館の長い歴史の中でも子どもの視点を入れた初めての展覧会が幕を開けた。展示作品数は約70点。作品の合間には子どもたちの写真の作品が展示され、来館者の中には画家と子どもの作品の呼応やズレを楽しむ姿も多く見られた。また、最後の展示室は、子どもたちの蓮池の鑑賞から表現につながった「水面」の作品が展示されるなど、鎌倉館で2年間過ごしてきた子どもたちの足跡を感じさせるものになった。

一方、子どもたちにとっては、「これ私の作品だっけ?」、「美術館に展示されるといい作品に見えるなぁ」、「これって僕らの言葉?」、「5年生なのにこんなことを書くことができたんだ」・・・と、自分自身の表現を客観的にみる機会となった。そして何よりも2ヶ月間、仲間や学芸員、作家との様々なワークショップをとおして、美術館がより自分が自分らしく存在できるもう一つの居場所となっていった。                               

以下は「あの色あの音あの光」に参画した中学生の感想である。

「美術館プロジェクトに参加していてよかった」って最近よく思う。 それは中学生になって元6-1のみんなとクラスも分かれ、あのころ(5,6年生のころ)にもどりたい・・・ って思うこともあるけど、美術館プロジェクトをやっていることによって大好きな美術館に通い、時間を忘れ、いやなことも忘れることができるからだと思う。

・・・ 私の好きな鎌倉美術館 ・・・
三の鳥居から八幡宮にかけてにぎやかなに屋台が並んでいる。 鎌倉館は私にとってふしぎな場所。 えっ・・・なんでかって・・?だってあんなににぎやかなのに道を曲がれば、 美術館につながる涼しげで静かでまるでそこだけ世界がちがうみたいだからなんだぁ~。

・・・ 蓮池通信 ・・・
蓮池通信はいろんな人が美術館で出会った作品のことや鑑賞してたどりついたストーリーなどを書き込み、見ることができる・・・。 私はそんな蓮池通信を見るのがたのしくてしかたがありません。 だから一人でも多くの人にこの蓮池通信を見てもらいたいです。
人情(2007年度6年1組)

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3ヶ月間の総入館者数は約14000人。 うち高校生以下が4700人、教員200人以上。 歴史ある美術館にとっての初の試みは、当初の予想をはるかに上回る成績だった。(高松)

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