蓮池通信
子ども×神奈川県立美術館・鎌倉館

神奈川県立近代美術館での活動5
2008年度5年2組

パラパラ映画をつくろう

神奈川県立近代美術館で活動を始めて3年になる。これまでは主に作品の鑑賞のみ行ってきたが、今年度は“美術館と能動的に関わる試み”に挑戦したいと考えた。 美術館が子どもにとっての遊び場となり、遊びの中で作品にふれることができれば子どもにとってより自然かもしれない。 そんな思いから鎌倉館に全面協力いただき、春から総合的な学習の時間において「パラパラ映画づくり」に取り組んできた5年2組の子どもたちと鎌倉館を舞台にしたパラパラ映画をつくることにした。 美術館という場所で存分に遊び、結果として作品にもふれ、美術館により親しみを持ってほしいと授業を組み立てた。

2009年1月「鎌倉館の中の○△□」

映画撮影に入る前に、まず撮影現場である鎌倉館がどんな場所であるかを知る必要がある。 鎌倉館や周辺の自然をよくみることを目的に「鎌倉館の中の○△□」と題してそれぞれがみつけたものをデジタルカメラで撮影した。

子どもたちはデジタルカメラをもつことで何か面白い形をみつけようという意識が高まり、どの子も夢中でシャッターを切っていた。 「こんなところに△がある」「この形も面白くない?」「水の波紋が映る天井は映画で使えるね」「あっちに蜂の巣みたいなものがたくさん落ちていたよ」 「水面に映る美術館だけを撮影したら面白かったよ」「この場所を撮影で使おう」・・・。 美術館や周辺の自然の中から様々な形や不思議なもの、心地いい場所をみつけ映画の発想を膨らませていた。

また、今回大切にしたことは“アングル”である。 同じものを撮影するのでもアングルによって全く印象が異なることを実感として知ってほしかったので、鎌倉館の中央に設置されている「コケシ(イサムノグチ作)」を様々なアングルで撮影させた。 そしてそれぞれの印象を皆で共有し、映画撮影にも活かせることを確認した。

2009年2月~3月「鎌倉館で撮影しよう」

台本作りは国語の時間を使って意欲的に取り組んだ。 担任の古谷先生の指導のもと、自分がみた現場のイメージや撮影した写真かそれぞれの発想を持ち寄り、グループで1つの物語にしていった。

5年2組は1学期から定期的に美術作品から物語をつくる鑑賞を行い、また「学校の住人」と題して校内のある場所の特徴から発想した空想の住人を立体で表現したが、 それらの経験が美術館から物語を生み出す意欲につながったのだと思う。 将来画家になる少年の物語、蓮池に住むカメやリスの物語、「コケシ(イサムノグチ作)」にまつわる物語、葉っぱが鎌倉館を冒険する物語など想像力溢れる7つの物語が完成した。

 手順のわかっている撮影はどのグループもスムーズに進めていた。 「鎌倉館の○△□」で取り組んだ“アングル”についてもどのグループも意識して撮影し、展示作品についても一つ一つ仲間と対話しながら鑑賞している姿が見られた。 また、撮影の中で新たに出てきた発想は皆で共有し、台本の内容を変更していた。撮影対象から新しい発想をし、表現していく姿はまさに鑑賞と表現が一体となった活動であった。

撮影終了後、学校で編集作業を行った。1学期から映画づくりで使い慣れたパソコンで手際よく編集を進めていた。 BGMは著作権を意識し、パソコンの音楽ソフトを使って場面に応じた曲を自分たちで作曲した。約2ヶ月という時間を費やし作品が完成した。

「鎌倉館にまた来たい」「鎌倉館が今までより近くなった気分」・・・。

これまで美術作品を鑑賞するためだけに訪れていた鎌倉館だったが、 5年2組にとっては鎌倉館が自分たちの好きなパラパラ映画づくりの舞台となることで、作品やまわりの自然を含めた鎌倉館が特別な場所になった。 近い将来、彼らが鎌倉館を訪れた際、5年生の時に紡ぎ出した物語がどのようなかたちで甦るのか楽しみである。

なお、今回撮影をするにあたり、全面的にご理解とご協力をいただた神奈川県立近代美術館の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。(高松)

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