蓮池通信
子ども×神奈川県立美術館・鎌倉館

映画『青色の画布 -十五歳、もうひとつの無言館-』
中学3年生(2007年度6年1組)

附属鎌倉小学校2007年度の卒業生たち。休日には仲間と共に小学校の頃から通いなれた神奈川県立近代美術館に集い、絵や彫刻について語り合ってきた。そんな彼らが無言館の存在を知ったのは、小学6年生の時。夏休みの修学旅行で無言館を訪問した。無言館について事前に学習していた彼らだが、戦死した画学生の作品や遺品を前に言葉を失ってしまう。鎌倉に戻った彼らは、その各々の思いを手紙に綴り、無言館館主の窪島誠一郎氏へ送った。それか3年が経ち、15歳になった彼らは中学校を卒業した。高校入学を数日後に控えたある日、かつての教室に集い、今の悩みや将来への不安を語り合う。そして、もう一度無言館に行くことにした。

■作品データ

『青色の画布 -十五歳、もうひとつの無言館-』
【予告編】http://www.rakudastudio.com/aoironogafu/

2011年/日本/カラー/50分/HD/16:9
監督:森内康博
企画:髙松智行(横浜国立大学教育人間科学部附属鎌倉小学校教諭)
制作:株式会社らくだスタジオ
協力:戦没画学生慰霊美術館 無言館、国立情報学研究所、
横浜国立大学教育人間科学部附属鎌倉小学校
監督補佐:田村大
録音:藤口諒太
音楽:森内清敬
出演:横浜国立大学教育人間科学部附属鎌倉小学校2007年度6年1組有志
   窪島誠一郎(戦没画学生慰霊美術館「無言館」館主)

■作品解説

2011年4月、高校入学を数日後に控えた15歳の少年少女が母校の小学校に集まった。彼らは中学校3年間を振り返り、日常、過去、将来への思いを吐露していく。堰を切ったように溢れる言葉の中、女生徒の一人が言う。「行かなきゃ行けない気がする」6年生の頃に訪れたあの場所に「今」行かなきゃ行けない。翌日、彼らは長野県上田市にある戦没画学生慰霊美術館「無言館」へと出発した。彼らにとってじつに3年ぶりとなる無言館。そこで彼らは、画学生と今の自分たちとを照らし合わせ、「私」にとっての表現とは何かを問い、そして言葉にする。次々と溢れ出る言葉の先に、彼ら彼女らはなにを思うのだろう。画学生の絵は3年前と同じように、冷たい部屋の中にある。当時13歳だった生徒たちが出演した短編ドキュメンタリー映画『MuseumTrip』 (ドイツ『WorldMediaFestival2011』受賞)から2年。13歳のあの頃、神奈川県立近代美術館で言葉を紡いだ彼ら彼女らは15歳となり、かつて鑑賞の授業で訪れた忘れがたい場所、戦没画学生慰霊美術館「無言館」で再会する。彼らの「今」を記録するために『MuseumTrip』を制作したチームが再び集結。15歳の少年少女の「告白」がドキュメンタリー映画として完成した。

■撮影後の感想

◯ 今まで美術館の活動は、正直、自分と向き合う時間だったので「ドッ...」と疲れました。ヘトヘトになりながらやった時もあったし、でもそういう時こそ、自分の中でスッキリして家に帰ることができました。「美術館の時間」とは・・・?モヤモヤがすっきりする時間。みんなに会う時間。向き合える時間。自分が変われるチャンスをもらえる時間。楽しい時間。バカやれる時間。なつかしい時間。<私の考え>を考えることで、他の人の考えを聞ける時間。自分だけじゃ分からないことを、みんなの言葉で気づく時間。本当に私にとっては大切な時間。(M.H)

◯ 絵を通して感じることは、その絵を描いている人がそこにいること。もしかしたら、絵自身は何も訴えていないし、そこに作者がいるなんてことはありえないことかもしれない。それは何でも自分の世界へ引きずり込んでしまう私の悪いクセかもしれない。それでも私は絵の住人と関わりをもつ。というかもちたいと思ってる。だからその絵から感じたことは、自分のことを言われているような気がする。絵をみる、それはその絵と知り合いになること。知り合いになって本音をぶちまけること。本音をぶちまけると、その絵が何か返事すること。何か返事をもらったら、気持ちが楽になったり落ち着けること。その繰り返しだと思う。絵が返事をくれない時もある。それは自分自身不安を持っていて決意ができない時。そうやって絵は自分のことを教えてくれる。こうしたやりとりの中で、私は「見透かされている」気分になるんだと思う。本当のことは分からない。5年間活動してきた今、そうやって勝手に解釈している。その答えは違うかもしれないし、自分は絵をみることを分かってないかもしれない。でもそれはドンマイでしょ。窪島さんは絵をみることに間違いはないって言ってたし。うん、私はそうやって解釈する!!(S.E)

◯ 学校(ポジティブ)と近美や無言館(ネガティブ)の両方にふれてきたからこそ、その2つの振り幅が自分を成長させてくれたと思う。これまでの自分の生活や環境ではもちろんポジティブな部分もたくさんあったけど、どちらかというとネガティブな部分が多かったので(←なんと言うか、ネガティブな部分が多い方が安心するというか。つまり、ネガティブをいっぱい持っていることを私自身悪く思ったりはしてない。)、美術館の鑑賞はそれを自分の外に出す(表現する)方法の一つを教えてくれた気がする。(A.I)

◯ 学校の授業で話すことは、話しているうちに、話すべきレールが作られます。どういうことかというと、その空間の中で出された話題に対して 言うべきことが決まっているんです。「今はこれを言うべきだ」みたく。だから 内容は 画一化する気がします。でも 美術館で絵について語る時は、1つの答えがないのが前提にあるから、レールがないし、自分の進みたい方向に 自信をもって 進むことができます。内容に 多様性が出ます。美術館の方が 質が高いのではないでしょうか?だって 個性を出せるし、「人」と会話できてると思うからです。(N.A)

■上映会場

①あーすぷらざ(神奈川県横浜市)
2011年7月20日
カナガワビエンナーレ国際児童画展関連企画。髙松によるレクチャー付き上映。

②関内ホール(神奈川県横浜市)
2011年10月30日
関内ホール小ホールで上映。約200人動員。

③上田映劇(長野県上田市)
2011年12月3日
主催:信州上田上映実行委員会/後援:上田市 上田市教育委員会

④臼杵市中央公民館(大分県臼杵市)
2011年11月29日
「大分県造形教育研究大会臼杵大会」で髙松による講演付き上映。

⑤横浜国立大学(神奈川県横浜市)
2011年12月19日
大学の授業内で上映。

⑥キッドアイラックアートホール(東京都世田谷区)
2012年1月21日
窪島誠一郎氏のトークショー付き。1日2回上映。

⑦上田映劇(長野県上田市)
2012年8月8日
主催:信州上田上映実行委員会/後援:上田市 上田市教育委員会
窪島誠一郎氏のトークショー付き上映。

⑧元・立誠小学校(京都府京都市)
2012年11月10日
窪島誠一郎氏のトークショー付上映。
主催:関西上映実行委員会
共催:横浜国立大学教育人間科学部附属鎌倉小学校
後援:戦没画学生慰霊美術館 無言館
   立命館大学国際平和ミュージアム


■上映会で寄せられた感想(一部)

◯ 美術教育、鑑賞教育にとどまらず、現在の日本の学校教育側の問題、矛盾について考えさせられました。(60代・女性)

◯ 美術館に行った時に、きっとこの映画の事が頭に浮かぶことと思います。子どもたちの洞察力、表現力、分析力、あらゆる面で圧倒されました。自分自身の人生(独身時代、結婚生活、子育て等)をふりかえり、今後へのステップになりそうです。(60代・女性)

◯ 個と向き合う表情、集団の中での自分、他者、無言館での緊張感、なんというリアリティでしょうか?(50代・男性)

◯ リセットされました。ありがとうございます。(30代・女性)

◯ あの頃、彼らと同じように不安定な心を抱えながらも必死に模索していた大人になることとはなにか、その答えに今私はたどり着いたのだろうか、あれから私自身成長する事が出来たのか、そんなことを彼らが正直な感想を述べていた最後のシーンの途中に考え等された(20代・男性)

◯ 自分がこの歳で同じ絵を見た時に、映画の中の子どもたちのように色々なものを感じることができるのかと考えながら見ていました。たくさんの人に見てほしい映画だと思います。(20代・女性)

◯ 悩み事があっても、弱みを見せるのが怖くて友達に相談することはなかった。当時の私は不安定で、家族にも当たっていた。美術館に行って自分を見つめ直す、そういう機会が当時の私にあったらまた違っていたのかな、と思った。(10代・女性)

◯ 私自身は小学生のときより「考えなさい」という言葉が「私の望む正しい答えとなる返答をしなさい」もしくは「私の考えていることを読み取りなさい」という意味になるような環境で育ってきましたので、本当に自分の感情と対峙し、それについて「考えられる」生徒たちのことを羨ましく思いました。(10代・女性)

■上映会に関する問い合わせ

※上映会場を募集しています。
学校の授業、教育機関や美術館でのシンポジウムでの上映等、お気軽にご相談下さい。

『青色の画布』上映実行委員会
Mail: info@rakudastudio.com
Tel: 080-5482-6548(担当:森内)
HP: http://www.rakudastudio.com/

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